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期間限定の青エク部屋。勝呂贔屓。
2025 . 05
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    しますぐ。
    にょた坊です。苦手な方ご注意下さい。

    タイトルに反して祭に行くとこまで書けなかったので続きます…。

    ・まずは誘いましょう




     志摩廉造は珍しく緊張していた。人目のない廊下で息を整える。先の角を曲がれば勝呂の部屋だ。彼女が自室にいることは分かっている。何を緊張することがあるのだろうか。いつものようなノリで軽く誘えばいいだけのことだ。「俺と二人で夏祭り行きませんか?」と。そう、二人で。
    (ひと夏の思い出のために…!)
     ぐっと拳を握り締めて、廉造は一歩踏み出した。


    「お嬢、お邪魔してええですか」
     風を通すため開け放たれた障子の端からひょいと顔を出して中を伺うと、おん、と短い応えが返ってきた。文机で勉強しているらしい勝呂は振り返らない。声だけで廉造だと判別したからなのだろうが、もうちょっと警戒心を持ってほしいと廉造は思う。
     勝呂はボーイッシュな服を好む上にこの暑さなのだから仕方ないとはいえ、タンクトップにショートパンツ姿だった。しかも胡坐をかいている。健康的な肉感の太腿が惜しげもなく晒されており、斜め後ろからでもその豊満な胸のかたちが見えてとれる。
    (あの太腿に頭乗っけてお嬢のおっぱい見上げたいわぁ。確実に往生してまうやろうけど…)
     そんな不埒ことを考えていて無言のままだった廉造を流石に不審に思ったのか、勝呂が「志摩?」と振り向いたところで廉造は我にかえった。勝呂を見下ろすかたちになるので、その谷間が嫌でも目に入ってしまい、うっすらと汗ばんだ肌にごくりと生唾を飲み込む。そこに再び勝呂から呼びかけられて、志摩は慌てて対面に座った。なんとなく正座で。


    「どないしたん、改まって」
    「あー、いやー、ま、毎日暑いですねぇ!」
    「せやなぁ。せやけど毎年京都はこんなもんやろ」
    「そういやそうですねぇ」
     なんちゅうベタな会話しとんねん、と廉造の脳内でもう一人の自分がツッコミを入れている気がした。早よ本題に入れや、ともう一人の自分が後押しする声に鼓舞されて廉造は口を開く。
    「お嬢、明日夏祭りあんの知ってます?」
    「あー、そういやおかんが言うてた気がするわ。花火上がるんやってな」
    「それや! お嬢、俺と一緒にその祭行かへん?」
     ずいと身を乗り出して言ったまではよかったものの、返ってきたのは勝呂の渋面だった。
    「明日終わらせときたい問題集があるんやけど…」
    「勉強なんて今もしとるやないですかああああ!」
     ほんまこのお人ヘンタイやー! と大げさに嘆く廉造に、勝呂は形のいい唇を少し尖らせた。
     廉造だって分かっているのだ。来年奨学生として正十字学園への進学を狙っている勝呂にとって、中学最後の夏休みが追い込みの時期だということくらい。勝呂がどれほど真剣に祓魔師になりたいと思っているかくらい。
     けれどもそんな勝呂のどこか張り詰めた姿が廉造は見ていて辛い。今からこんなに自分を追い込むかのようにしていては、遅かれ早かれ破綻が訪れそうで恐ろしかった。だから、自分が勝呂の息抜きをさせたいと思うのだ。それが勝呂を祭に誘う理由の半分。残り半分は、所謂下心ではあるが。
    「一日くらいええやないですかぁ」
    「…嫌や」
     マズった、と廉造は気づく。ヘンタイ呼ばわりしたことで勝呂の機嫌を損ねさせたらしい。難易度の上がった攻略対象をどうしたものかと廉造が思考を巡らせる前に、ひょいと助っ人が顔を出した。


    「廉造、お前の阿呆声が廊下まで響いとったで。何しとんねん」
    「金造!」
    「げ、金兄…!」
    「げ、てなんやお前、兄に向かって。お嬢、お邪魔しますえ」
     金色に染めた髪をふよふよと揺らして入ってきたのは祓魔師の制服を着た志摩家の四男坊であった。廉造を足蹴にして転がし、何食わぬ顔で勝呂の正面に座る。
    「ただいまぁ、お嬢」
    「おん、おかえり。出張はばかりさん」
    「大したことなかったですわ。そんでこれ、お嬢にお土産やねん」
    「いつもおおきに。…わぁ、かいらしいなぁ」
     金兄何すんねん! と批難の声を上げる廉造を金造は勿論、この光景になれている勝呂も聞き流した。
     祓魔師の任務で数日京都を離れていた金造は、出張所からの帰宅前に虎屋に寄ったようだった。金造から渡された小さな紙袋には、出張先のご当地キャラクターのストラップが入っていた。以前に贈ったご当地キーホルダーが喜ばれて以来、金造は勝呂の好きそうなご当地モノを色々買ってくるようになった。警邏隊所属の金造の出張はそう多くはないが、それでも少しずつ勝呂の部屋に増えてきている。
    「弟には何もないんかい、金兄」
    「家用にちゃんと菓子買うてきとるわ」
     畳に寝転がったまま文句を垂れる弟に対する兄の返答はそっけなかった。
    「それより何もめとったん」
    「あー…志摩がな、祭に行こうて言うてきたんやけど」
    「あ! そういや明日やったな! ええやないですか。行きましょうや、お嬢!」
     屈託のない笑顔で言われて、勝呂は一瞬言葉に詰まる。それでも「せやけど俺は勉強が…」と言いかければ、金造ががばりと身を乗り出した。
    「お嬢、つれないこと言わんといてや! 来年お嬢は東京行ってしまうやないですか。そしたらしばらく俺ら、お嬢と一緒に祭行ったり出かけたり出来へんのやで! 今年行っとかんでいつ行くねん!」
     大丈夫や、と金造が勝呂の両手を握る。あ、と廉造が声を上げるが熱弁する金造の耳には届いていない。
    「お嬢なら1日くらい勉強休んでも遅れたりなんぞせえへんて。何やったら俺や柔兄が勉強教えるし」
     ね? と全開の、まるで向日葵のような笑顔で言われては、もう勝呂に断る言葉はなかった。こくり、と首が縦に振られる。
     ほな明日迎えに来ますわ時間はまた連絡しますよってお嬢の勉強の邪魔したらあかんから今日はこれで失礼しますこれも持って帰るさかい心配せんでええですよー、と流れるような台詞が廉造の耳を通り抜け、はっと気づいたときには兄に首根っこを持たれて廊下に出たところだった。
    「お、お嬢!」
     引きずられながら慌てて勝呂を呼べば、苦笑と共に手を振られた。
    「また明日な、志摩」



    「せっかくお嬢とデートするチャンスやったのに…」
     家へと帰る道すがら、前を歩く金造の背中に文句をぶつければ、振り返った兄はにやりと笑った。
    「その割には旗色悪そうやったやん。むしろ俺のおかげや感謝せぇよ。礼は晩飯のおかず1品で手打ったる」
    「これからお嬢を口説き落とすところやったんや」
    「往生際悪いなぁ。どっちにしろ口止め料は貰とくで」
     お嬢と二人で夏祭りとか柔兄が知ったらどないなるやろなぁおお怖ぁ、と大げさに肩をすくめる兄に、廉造は大人しく白旗を振った。





    ------------------

    というわけで、しますぐと銘打っておきながら金造のターンです。
    一応柔造と蝮と子猫丸のターンまで考えてる。
    ところでこれ今のところにょたでなくてもいいんじゃないかって不安になった。

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