「ぼーん、いてはりますー? ってなんや珍し。うたた寝しとるわ。坊、首寝違えますえ。―――………起きひんなぁ。最近お疲れみたいやしなぁ、…誰かさんの所為で。あんたもそう思わんか、伽樓羅はん?」
『………安い挑発だな、志摩の者よ』
「そのやっすい挑発に乗って出てきなはる誰かさんはホンマ親切で助かるわぁ」
『何用だ』
「愛想ないなぁ。坊をお護りするもん同士、仲良うしようとか思わんのん?」
『思わぬな。もとより、我の秘密が周知のものとなり、不浄王が滅んだ以上、座主の血統を護る意味がおぬしらにはあるのか』
「なん…」
『そもそもが明王陀羅尼宗とは、不浄王の封印を維持するがために不角とそれに連なる者たちが創ったものだ。座主が契約と封印の秘密を継ぎ、宗徒は座主血統が途絶えぬよう護ることを使命とした。さて、その使命はもう必要なくなったのではないか?』
「それ言うたらあんたかて、不浄王おらんくなったのにまだ坊と契約しとるやないの」
『竜士がそれを望んだからだ。ぬしの言うとおり、不浄王はもうおらぬ。ゆえに我は封印のみに力を割く必要がなくなった。これからは我が竜士を、不角の血を継ぐものを護ろうぞ』
「なんや、それ…。ずいぶんとご執心やなぁ。つまり自分がおるから明陀は用済み、そう言いたいんか」
『そう聞こえたか?』
「聞こえたで。せやけど…くだらんなぁ。だいたい意味とか、使命とか、悪魔も意外とつまらんこと気にするんやなぁ。そないな理由だけで俺がこん人の傍におると思うてんの。あんまり見くびらんといてや」
『ほう…』
「明陀とか志摩家とか、雛形はそれかもしれんけど、坊を護るて決めたんは俺自身の心や。代々の座主と契約してきたからゆうても、俺からしてみたらぽっと出のあんたに任せてホイホイ引っ込んでられるほど、生半な気持ちやないんやで」
『…ならばせいぜい竜士から見捨てられぬようにするのだな』
「そのまま返すで。せいぜい契約打ち切られんようおきばりやす」
『………さて、奴は出て行ったぞ、竜士よ』
「お前ら、人の頭の上で何言い争ってん…」
『安心しろ、狸寝入りに気づいたのは我だけだ』
「そういう問題とちゃうんやけどな」
『だが嬉しかろう』
「喧しいわ」
--------------------------------
まだちょっとキャラが迷走気味かもしれない。
そもそも伽樓羅は捏造が過ぎるんですけどね。
話の流れで没った部分↓
「だいたい何でそないなめんどい契約にしたん」
『血を継ぐことが保身に繋がればよいと思った』
「はい?」
『不角があまりにも己が身ばかりを削っていたのでな…。達磨や竜士を見てきたのならば理解できよう。あれらはそういう血筋だ』
そのために志摩家や宝生家が体張る分には一向に気にしない伽樓羅とかな。
でも志摩家の先祖が何もかも知った上での言いだしっぺだと萌えます。
不浄王の封印はできたけど色々制約背負っちゃった不角を俺が護るんやーとかいって明陀宗つくる志摩。不角を開祖に据えて座主血統を護るシステムを作り上げて、でも自分の子孫には自分が知ってる秘密の根本は伝えずに往生すんの。
座主血統を護りつつ、嘘や疑心とか伽樓羅の餌も調達できるし一石二鳥。
秘密を守るためという名目で不角を孤独に追い込んで「伽樓羅、私には貴方しかいない…」とかいう展開を目論んでた伽樓羅は『志摩の者め…ギリィ』ってなるけど餌多いのは利点だしな畜生とかそういう。
ご先祖世代妄想落ち着け。
[5回]
PR